News Letter -2024年2月(西田)-

皆さんは“春の花”と言われたら、何を思い浮かべますか?大抵の人は“桜”と答えるでしょう。しかし、昔は“春の花”と言えば“梅”でした。奈良時代に漢方薬として日本へ伝わりましたが、その美しさと香りが当時の貴族を魅了し、自分の住居に梅の木を植えることが流行っていたようです。2月と言えば、梅が見ごろ。桜も良いですが、たまには志向を変えて、梅見などなさってみては如何でしょうか。

話は年末に戻りますが、師走のバタバタした時期に、御年78歳になられる方から相続についてのご相談を受けました。しっかりした方で、税金の対策などある程度ご自身で調べておられて、できるだけ残される家族の迷惑にならない形で財産を残してあげたい、ということで、新年に家族で集まる前のタイミングで相談に来てくださったそうです。

財産の管理方法を一通り見せていただきましたところ、危機管理もしっかりされており、問題はないのですが、“残される家族にできるだけ迷惑をかけたくない”という視点に立った時、少し気になることがありました。それは、“財産があまりにも分けられすぎている”ことです。ざっと見ただけでも、ご自宅、自宅に隣接する宅地(畑)、リゾートマンション、銀行口座が7つ、FX、ネット証券などなど。

財産が多いのは良いことで、散らせばそれはリスクコントロールになるのですが、相続時に散りすぎているのは問題です。銀行口座は、本人が亡くなると凍結されてしまいますので、お金はおろせなくなります。再びおろせるようにするためには、所定の用紙に相続人全員の実印を押し、遺言書(遺産分割協議書)を添えて銀行に提出しなければなりません。この作業は、どこか一カ所だけやれば済むのではなく、各金融機関で、その都度行わねばなりません。相続のことを考え始めたら、銀行口座はできれば3つ以内にして、相続人となる方たちに通帳の場所くらいはお知らせしておくことをお勧めします。

また、近年よく問題となるのが、“デジタル資産”と呼ばれるネット銀行の預貯金、ネット証券の有価証券、暗号資産といった類のものです。デジタル遺産の相続では、相続人がその存在自体を知らなかったり、パスワードがわからないためにデジタル遺産を把握できなかったりという問題がよく起きます。FXのような追証金があるような財産が把握されてないと、ある日突然、督促や訴訟の知らせが届いて、相続人が仰天する事態にもなりかねないのです。

最悪のケースは、“家族が財産を分け終わってから、知らない通帳や把握してない遺産が出てくること” です。そうなると、そのお金の分け方を決めるために、また全員で集まり、話し合いをすることになってしまいます。場合によっては、納める税金にも影響が出るかもしれません。もっと言えば、出てきた遺産がマイナスの遺産だったりすると、プラスの遺産を上回る場合だって考えられます。相続の意思表示ができるのは相続発生を知った時から3カ月。マイナスの遺産を知らなかったため、意思表示せずに相続すると、思わぬ債務を相続人が背負うことにもなりかねません。…そんなことになれば、残された人たちは迷惑どころの騒ぎじゃありませんね。

 不動産についても、権利や価格の確認が必要です。権利証(登記識別情報)と固定資産評価証明書を用意し、さらに地番、建物番号、固定資産評価額といった詳細な情報をノートにまとめておいてあげれば、残された家族は確認の手間が省かれ、故人の行き届いた気配りに感謝することでしょう。こうしなければならない、というものではありませんが、遺族に残したつもりの財産が行方不明になったり、逆に迷惑になった、なんてことにならないためにも、ご参考にしていただければ幸いです。

西田
西田

相続の準備で、何から手を付ければよいか聞かれますが、

それは“預貯金と自宅という2つの大きな財産”の整理です。

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