賃貸でお部屋を借りて退去する時に、現状回復義務という責任を借主は貸主に対して負う。
では、現状回復義務とは具体的に何なのか?
クロスを例にとる。
私がこの業界に入ったころ(40年前、1984年、昭和59年)は、クロスの貼替費用は全て借主が負担していた。よくもめた。
その後1998年に国交省から現状回復のガイドラインが作成され、それを受けて賃貸紛争防止条例(俗にいう東京ルール)が2004年にできた。
東京ルールは、東京の物件に適用される。
それによれば、クロスは消耗品であり、6年でその価値が1になりほぼ償却されると書かれている。
つまり、自然に汚れたものは家賃に含まれる、という考えだ。
では、落書きはどうか。これも、ガイドラインの中に明記されている。
借主には、借りている物件を善良なる管理者の注意をもって使用、保管する義務があり、
償却期間が経過しても、落書きなどは自然損耗とは言えず、
明らかに故意に基づく特別損耗であり、借主に現状回復義務があり、
そのための材料費、労賃は借主が負わなければならない、と書かれてある。
つまり、いくら償却期間が過ぎたからといって、落書きなどをしなければ、
まだ、十分にクロスは使用できたにもかかわらず、落書きによって、使用できなくなったのだから
借主は善管注意義務責任に基づき現状回復しろ、という事だ。
ただ、判例はまちまちである。
ガイドラインも東京ルールも判例に基づき作成されたものだが、裁判官はガイドライン拘束されない。
では、どうすれば紛争を防げるのか。
ガイドラインに基づき契約し、契約書に紛争になりそうなことは具体的に明記し、契約の際によく説明することだ。
例えば、ガイドラインには、クロスの貼替は、損傷した部分を含む㎡単位で現状回復を負うと書かれているが、契約の特約でその壁一面単位、場合によっては、部屋単位で貼替すると明記するとか。
ただ、あまりにも貸主に有利な特約は無効となる。
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