麻薬王と呼ばれた男 ~ブレイキング・バッド~ (水田)

一ヶ月ぶりに失礼します。水田です。

皆さま、「hulu」はご存知ですか? 一言で言うなら「定額動画配信サービス」。月額933円(税別)で、10,000本を超える動画コンテンツが見放題になる、というなんとも魅力的なサービスです。
このサービスの素晴らしさについては他に譲りますが、このhuluで毎日僕が憑かれたように観ている海外ドラマがあります。めちゃくちゃ面白いのに、日本ではいまひとつ話題にならない本作。どうも悔しいので、今回はそれをご紹介させていただきます。

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タイトルは、「ブレイキング・バッド」。「悪に手を染める」「道を踏み外す」、といった意味のスラングです。写真の、ものすごくワルそうなおじさんがなんと主人公ウォルター・ホワイト。高校の化学教師を務める冴えない中年男性だったのですが、ある日肺ガンであることを宣告されます。絶望の淵にありながら、思いをめぐらすのは残された家族のその後。しかし家族に残すような財産はない……。「金を……どうにかして金を作らなくちゃ……」。悩んだ彼は、ある日元教え子である麻薬の(下っ端)売人ジェシー・ピンクマンと再会します。そこでウォルターは思い立ちます。自分には金はないが、“化学の知識”があるじゃないかと。ウォルターは売人ジェシーにこう持ちかけます。

私と組まないか? 私がドラッグを作るから、君が売ってくれ

なんとまあ。主人公がドラッグ作ってるなんて日本のドラマではまずありえない設定ですね。

ウォルターはこうして「悪に手を染めて」いくのですが、ドラッグビジネスも楽ではありません。地元のギャングに脅されたり、メキシコの麻薬カルテルに命を狙われたり、大物ドラッグディーラーに監禁されたり……。降りかかる火の粉を払っていくたび、ウォルターはいつしか「麻薬王ハイゼンベルグ」と呼ばれるようになっていきます。しかし家族や親戚はそれを知りません。義弟である麻薬捜査官(!)ハンクは「最近この街にはハイゼンベルグと呼ばれる謎の麻薬王が現れたらしい。俺はそいつをなんとしても捕まえるんだ」と食卓で語ります。同じ食卓にハイゼンベルグがいるとは露知らず

本作は一見突飛に思える設定とは裏腹に、派手なアクションやCGとは無縁で、人間ドラマを淡々と描くのが特徴です。ひとことで言うなら「地味」。にも関わらず、アメリカでは大絶賛を受け、ギネス世界記録に「歴代最も評価されたテレビドラマ」として認定されるほど。

何がいいって、とにかくキャラクターがいいんですよね。だんだんと道を踏み外し、冴えない中年男性だった筈が極悪人へと変貌していく主人公ウォルター・ホワイト。ドジと失敗ばかりで根暗なのになぜか憎めなくて、気付いたら応援を寄せてしまう売人ジェシー・ピンクマン。典型的なアメリカのタフガイを自認しつつ、苦悩しながらも捜査を続ける麻薬捜査官ハンク。穏やかで腰の低い敏腕経営者の仮面の裏で、巨大ドラッグビジネスを取り仕切るマフィア王ガス・フリング。疲れた中年男、といった風貌ながら、ガスの片腕として暗殺・警護・諜報を一手に担う最強の探偵マイク。こういった面々が織りなす人間模様を、ていねいな脚本が追っていきます。幼稚なドラマに飽き、大人向けの重みあるストーリーに飢えているあなた。オススメです。

観たら僕と一緒に叫びましょう。

I am the one who knocks!(危険人物は、この“俺”だ!)

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