不動産の売脚をする場合、大抵はどこかの不動産会社に売却を依頼する。もちろん直接知り合いに売却をすることも可能だ。
ただし、買主が住宅ローンを利用する場合は、不動産会社の作成した重要事項説明書と契約書が必要になる。ほとんどの買手は住宅ローンを利用する。したがってどこかの不動産会社に頼むことになる。その際に媒介契約を締結する。
媒介契約書には、3種類の形式があり、売主への拘束力が強い順に、専属専任媒介契約、専任媒介契約、一般媒介契約がある。専任は、一社にしか頼めないが、一般は複数の業者に頼める。また、専任は、国が指定した流通機構に必ず情報を登録して情報を他の不動産業者にも公開することが義務づけられている。一般はその義務はない。また、専任は定期的に売主へ販売の状況を説明する義務があるが、一般は無い。
なぜ、このような違いがあるのか。それは、もし、専任の業者が情報を公開しないで自社だけで販売活動をすれば買主は自社だけのお客様に限定され、成約までの時間を多く要し、結果、売主の利益を著しく損なうからである。ところが、情報を公開しているにもかかわらず、他社の業者の紹介を拒否することが未だに行われている。いわゆる「囲い込み」行為だ。残念なことに業界を代表する大手不動産会社も行っている。以前、大々的に新聞の一面に名指しで批判されたが、少なくなったとはいえ、いまだに行われている。そもそも、一社が売主と買主の双方から依頼を受けること「両手取引」を認めているのは日本くらいである。売主と買主の利益は相反するのだから無理がある。民法では両方の代理人になる事「双方代理」を禁止しているが、不動産の媒介契約は代理ではなく媒介なので禁止にならないという?詭弁ではないか。
では、ほんとうに両手取引は悪なのか。一番の問題は、両手取引による「囲い込み」行為である。両手取引はそういう可能性の要素を多分に含んでいるので、海外では禁止されているのだ。
一般媒介であれば複数の業者が販売活動を行うので「囲い込み」はできないという人がいる。本当にそうか。実際にあった話だが、ある信託銀行系の不動産会社が売主から売却の依頼を受けたが、あえて専任ではなく、一般媒介契約を結び販売活動を行っていた。ただ、一般媒介契約を結んだのは、一社だけなので、専任と変わらない。なぜ、そのような事をするのか?専任であれば、情報を他業者へ公開しなければならないためである。専任を結んで情報を公開しないのは、大手の立場上まずいのである。場合によっては一般媒介契約すら結ばないで活動を始めて、目ぼしがついてから専任契約を締結する。巧妙に仕組まれた「囲い込み」である。
結局、自分の利益を最大限に優先しているだけである。
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